風謡いの聖典:ファラズマの三つの恐怖

「現世は生まれ、現世は死ぬ。すなわち、汝も我もその狭間のいずこかに住まっている」

言語や知性のあるなしに関わらず、誰もが理解するような方法で、この言葉が『封』に刻まれているという。

『封』とは以前の現世の墓石であった。『封』とは、次なる現世の礎石であった。形定まらぬ上位宇宙の中でメイルシュトロームを漂流するこの現世にファラズマが生まれた場所こそ、『封』であった。彼女はそこにおり、『封』の真実を読み解き、その中核を踏みしめた。『封』の八つの辺から見渡し、ファラズマは可能性の永遠を目にした。混ざり合った、かつてあったものの残骸の、そのままのエントロピーから形成される広がりを。彼女は『永らえる者』だが、自分が何を生き延びたかを知らない――ただ彼女は永らえるのみ。

ファラズマは『封』から降りた。彼女が無に降りていくと、彼女の足場となるために『封』は広がった。彼女は一瞬、『封』の八つの辺の一つに立ち止まり、新しい現世への一歩を踏み出した。そこで彼女は自らが既に孤独でないことを知った。何かが知られざる彼方から噛みつき、かじりついてきた。何か大きくて、飢えていて、危険なものだった。ファラズマはまさに最初の一歩において、最初の恐怖を知った――未知の恐怖、生き残った何かへの恐怖、自分が永らえられないことへの恐怖だった。

そのため、彼女は脇へと退いた。

ファラズマが歩くにつれて、『封』の辺は伸びた。『封』が力を増していくと、彼女の足下で外方次元界が花咲いた。ファラズマの歩むところには、次元界そのものが追従し、『封』の周囲の円と共に、彼女は道を広げ、人々が愛し合い、憎み合い、破壊し、創造する場所を生み出す時計回りの、創世の螺旋を歩んだ。彼女が螺旋に歩むにつれて、『封』そのものが外向きに伸び、『螺旋の塔』を形作った。『螺旋の塔』はその始点とは逆側に横たわるものへ向けて伸びていった。そしてファラズマが歩みを終えた際、『螺旋の塔』はファラズマの住まいとなる、ボーンヤードを上に支えるように伸びた。

『封』はファラズマの螺旋の道に対応した。そして彼女が歩むにつれて、この新しい現世に他の神格が生まれた。『深淵の語り手』はすぐにエントロピーの心臓部へと退き、続いた出来事に参加して悩まされることがなかった。デズナは創世に驚嘆すると、手を一振りして上空に最初の夜をもたらした。サーレンレイがそのすぐ後に引き続き、デズナと彼女の作品に心打たれた。このため、彼女は星々の中で最も強く輝くものを太陽として輝かせることにし、最初の昼を生み出した。やがて最初の死となるイヒス、そして最初の殺人者となるその兄弟アスモデウスは互いを定義し、善と悪をもたらした。そしてアチャケクがその狭間に立ち上がった。彼は道徳を巡る仲裁者にして裁判官であったが、その公正なる庇護はやがて野蛮さへと堕落する定めであった。最初の神々の全てに名があったわけはなく、記憶されたわけでもない。『日食』を越えて踏み出した者もいたが、まだこの世界に死はなく、この『王子』(訳注:最初の四騎士First Horsemenのこと、Oinodaemonと呼称されていたが、James Jacobs自身のコメント(本ブログ記事の英語版)によって当該名称はD&D用語であるため使わないことが明言された)は時が来るまで『螺旋の塔』の玉座に『縛られる』こととなった。そして最後の神は愚かにもファラズマの最初の恐怖に満ちた歩みの先へと踏みだし、そうすることによって、変化させられ、その恐怖に吸収された。その恐怖がロヴァガグになったのか、あるいは神を貪った恐怖そのものがロヴァガグだったのか、神々ですら覚えていない。

こうして最初の八人の神が成りませる時、ファラズマもまた何かが時の向こう側で目覚めたのを感じた。創世のために彼女が時計回りの螺旋を歩んだちょうどその時、現世の反対側のところで、反時計回りの螺旋が開いた。そこでは、『閾に潜む者』が第二の創世の錨を形作っていた。ファラズマはこのようにして、それぞれの循環には『永らえる者』だけでなく、『見る者』が必要だと知った。この二者、ファラズマとヨグ=ソトースの間で、全ての現世がこのようにグレート・ビヨンドとなった。こうして創造の時代が始まった。

そして数々の時代が続き、ファラズマはその玉座に留まった。彼女は生から死へと通り過ぎる者全てを見つめ、審判を下した。そして時が経つと、生まれる者の数に死者の数が近づいてきた。やがて、ファラズマは第二の恐怖を目にした。予想を超えた出来事が運命を破壊し、世界全てで、予言の流れが永遠に変化した。嵐が激しくなり、帝国が滅び、神々が死に、そして現世の最も不幸な片隅では、世界全てが終焉を迎えた。ファラズマその人が、いまだ来たらぬその短い一瞬に道を失い、再び目を開いた時に、彼女は『封』が消え失せ、何も無い虚ろが残されたのを目にした。彼女は、運命のこのような波紋がかつて起きたことがあるかどうかを問いただすために『見る者』のところへ行った。それは、『封』の喪失が常に定められたことであったのを判断するためだったのだが、『見る者』は答えようとしなかった。

それでも現世は続いた。定命の者が生まれ、そして死ぬ。ファラズマの第二の恐怖は和らぎ、彼女は失われた『封』は悪しき予兆ではなく、親や師の逝去に近いものだと悟った。今や現世の循環は自ら続いていく程に成熟しており、ファラズマは今後、現世はそれ自身でうまく続いていくということを知っていた。遠き創造の日々は過ぎ去り、ファラズマは自分の未来は永遠に、かつての日々の栄光の影にあるということを知っていた。そして、どれだけの時間が残されているのかを知りながらも、同時に彼女は定命の者が享受しきれないほどの栄光と勝利を味わう時間があることをも知っていた。

現世は最終的に終わるものだが、ファラズマは絶望しない。彼女は、死者の数がかつて生まれる者の数に影を落としたことがないと知っている。『見る者』が循環の外部から目撃していたとしても、常に次の循環を始めるために、循環の中には『永らえる者』がいなければならぬのである。やがて、誕生の流れは減っていくだろう。そしてその数は静止した記録となるだろう。そしてその最後の時間に、ファラズマは自分が次の循環の『封』を用意しなければならないことを知っている。そして、彼女は死の最後の一瞬が近づいてくるのを見届け、待たなければならない。そして生からの最後の訪問者が裁きのために玉座の前に歩み出る時、ファラズマは、それが自分の前に立つ『永らえる者』であること、そして自らが裁くのではなく、裁かれるのだということを知っている。そして、彼女の死と共に、この循環は死ぬのである。

しかし、ここにファラズマの最後の恐怖が待ち受けている。運命が破壊されたこと、『封』が失われたことによって彼女の信念は揺らいでおり、もはや彼女は自分が最後から二番目に死ぬ者であることを事実として捉えていない。もし、彼女が自分自身の前に裁かれるために歩み、『永らえる者』が残らないなら、循環は死に絶え、先へ進むものはないのだから。


作者について
James Jacobsはパスファインダーのクリエイティブ・ディレクターである。彼はゴラリオンの想像の始まりに立ち会ったが、この世界の英雄と悪党によって信仰されている神格の多くは既に何十年も前から存在していた。デズナやロヴァガグ、サーレンレイにアーバダー、アチャケクとゾン=クーソンのような神々は80年代後半と90年代初期のJamesのホーム・キャンペーンでPC達やNPC達の間で最初に信仰されていた。それらをパスファインダー世界の神格として共有し、プレイヤーやクリエイター達がその神々を好きになったり、嫌いになったり(あるいは神々のコスプレをしたり)したことが、経歴のハイライトである。

風謡いの聖典について
ヴァリシアのロスト・コーストの北端にある風謡いの修道院は、20近くの異なる信仰を持つ司祭達によって維持されている、信仰間の議論をするための場所で、仮面の修道院長によって率いられている。失われし神託の時代の始まりに、風謡いの修道院はその信者の戦いと逃亡という苦難を経験したが、今日では再興し始めている。新しい仮面の修道院長は新たな聴衆を導き、風謡いの聖典―神々そのものの寓話―が再び、修道院の壁に記録され始めた。これらの聖典の中には、ゴラリオンの神話や伝説として示されている者もある。真実もあるかもしれないが、偽りもあるだろう。どれが真実でどれが偽りであるかは、信者が決めることになっている。

公式ブログ


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