Tales of Lost Omens:ジャングルは全てを奪う

「ここかもしれませんね」

アリヤマがウェイファインダーを見ながら、慎重に口にした。

このジャングルは非常に暑く、じめじめとしていたが、彼女はそのような様子を見せなかった。絹の袖に紫のキルトのダブレットを身につけていた。セルリアン色のマントは、金のペンダントで留められている。完璧に編み込まれた髪は、面長の顔から後ろへと広がっていて、金で装飾された尖った耳が見える。まるでグランド・ロッジでの会議に出席するかのような爽やかさだった。

「かもしれない?」

レイノルズは、思わず声を上げた。アリヤマとは対照的に、その茶髪には汗がにじんでおり、タルドール風の衣服はしわだらけで汚れていた。

「『かもしれない』!? かもしれない、だって!? 『かもしれない』ってことはないだろう! フォラは、行方不明になったパスファインダーは、血塗られた大ムワンギの真ん中にある、サーペントフォークの廃墟にいると言った。シグヴァードはその遺跡を見つけるために我々をここに送り込んだんだぞ。じゃあ、ここは何なんだ!?」

アリヤマは顔を上げ、眉をひそめた。同行者である人間が、両手を広げ、目の前にそびえ立つ石造りのアーチをしつこく示していた。アーチの両側には巨大な頭巾をかぶったコブラの像が立っていた。石の細工は非常に美しく、渦巻き状に絡み合った線が生い茂った丘の中腹への入り口を縁取り、草書Kしていた。かつてアーチの中に扉があったとしても、それはとっくになくなってしまっていた。二人と内部との間には、長方形の黒ずんだ影があるだけだった。

「認めたくはないけど、ここはレイノルドに賛成ね。ここがそうでなくてなんなの」

トリが腰に拳を当てて言った。この爽やかな顔立ちをしたドワーフの、結い上げた頭の部分は、ほとんど仲間の肋骨のあたりまでしかない。

「中へ入ってパスファインダーを見つけようよ」

「その通りだ」

レイノルドはうなずいた。

「行くぞ! そしてシグヴァードと彼女の果てしない雑用仕事に戻るのだ。そうすれば、幸いなことに、輝かしい文明の国アブサロムに戻る船があるのだからな」

アリヤマは手を挙げた。

「アーバダーは言いました。世の中には2種類の人間がいる……それは、衝動的な人間と裕福な人間だと」

と彼女は冷静に言った。

「事実をよく吟味して考えなければなりませんでしょう」

「俺が思うに」

レイノルドは目を丸くして言った。

「この、外に蛇がいる大きく生い茂った神殿は、サーペントフォークの廃墟だろうが」

トリが鼻で笑った。
エルフはため息をついた。

「そうかもしれませんね。でも考えてみてください。サーペントフォークはゴラリオンで最も古い文明のひとつなのですよ。アズラントよりも古い文明なのです。それなのに、この彫刻は年月を経てすり減っているように見えますか? アースフォールを生き延びたかのように見えるでしょうか?」

レイノルドは口を開いた。そして、口を閉じた。顔をしかめながら。

「私がムワンギで育ったということを思い出してください」

アリヤマが続けた。

「手入れをされないジャングルというのは、全てを奪うのです。全てを。ここが本当に古代のサーペントフォークの神殿であるなら、今頃、つるだけになってしまっているでしょう。シグヴァードが最初に派遣したパスファインダーのエージェントは、サーペントフォークの学者でした。そのことを知っていたはずです。恐らく、ここではないのでしょう」

「つまり、何が言いたいの?」

トリは怒りで頬を紅潮させながら尋ねた。

「じゃあ、これは何なの?」

アリヤマは彼女に向き直った。

「おそらく、信仰を取り違えたダハクのドラゴン教団の残骸でしょう。コボルド、チャラウ=カ、ボガード……、そんなところです。この手のカルトはここではよくあることで、絶えず産まれては消えていくのですよ。ひどい話です。でも、サーペントフォークが実際に作ったものではないことは確かでしょうね」

トリは溜息を吐き、声に失望感を漂わせた。

「つまり、まだ見つかっていないってことなのね。失踪したパスファインダーを助けてあげられないってこと」

アリヤマはドワーフの広い肩に、手袋をはめた手を置いた。

「心配しないで、お若い方。これがあなたのパスファインダー協会での初めての旅行だということ、あなたが自分の足跡を残したいと思っていることは承知しております。でも、心してください。これが冒険者の生き方なのです。思慮深く、考えながら探索する。アーバダー自身も旅人ですよね? でも、あの方はお急ぎにならない。文明の歯車がゆっくりと進んでいくように、あの方はゆっくりと、そして休むことなく進んでいくのです。我々も慎重に歩み、常に前進しなければなりません。行方不明のパスファインダー諜報員、トリ・レッドバレルを見つけようではありませんか。忍耐と、アーバダーの御手によって」

トリは小さく頷いて教えを受け入れ、肩をすくめた。

「探し続けよう。でも、早く何かと戦えるといいね。この暑さで、すっかりイライラしちゃったわ」

アリヤマは微笑んだ。

「戦いもまた、冒険の避けられぬ一面です。この建物は目的地ではありませんでしたが、近付いているはずですよ。ウェイファインダーで調べさせて下さいね」

エルフは丸い蓋を開けて、その中を覗き込んだ。

1分ほどが経過した。エルフはウェイファインダーを見ながら、ぶつぶつと呟いていた。ドワーフはその様子を見守りながら、周囲の景色を眺めていた。周りでは、ジャングルが生命に溢れた音を立てていた。

「あーっと……アリ?」
「トリ、ちょっと待って」
「あたしね、ただね、」
「トリ。お願いです、こらえて」
「分かった。ただレイノルドがいなくなっただけだもんね」
「そうですか。へえ…………は!?」

アリヤマは驚いて顔を上げた。

「あの人、どこに行ったんです?」
「私ね、……んーと、たぶん、中に入ったんじゃないかなって」

二人は10フィート先にある、暗い通路を眺めた。

「馬鹿馬鹿しい、腹立たしい、衝動的、卑劣、恰好つけの人間が!!」

エルフは呟いた。

「あの人は、いつも……」

そのとき、丘の中腹から叫び声が響いた。

「ああ、あいつだね」

トリはが背中から両刃の戦斧を取り出した。

「ちょっと待って。私たちは……」

レイノルドが物陰から飛び出してきた。その目は大きく見開いている。彼は片手にショートソードを持っていた。もう片方の手には、とぐろを巻く金色の蛇の置物があった。

「ここだ! 助けてくれ!」

レイノルドが叫んだ。

「何をしたのですか?」

アリヤマは説明を求めた。

「時間がない! 助けてくれ!」

薄暗い開口部から、緑色のローブを着た背の高い、鱗のある人型生物が3体、出てきた。アリヤマは最初、イラクシかと思った。しかし、彼らの頭部にはトカゲめいたところがなく、まるで頭巾をかぶったコブラのようだった。彼らがしなやかに戦闘態勢に入ると、鞭のような長い尾が蠢いた。そのうちの1体が、シュウ、シュウと音を立てながら、前腕ほどの長さがある、曲刀を引き抜いた。

「ありえない」

アリヤマは息をついた。

レイノルドがフードをかぶった大きな像の1つの横を逃げ回ると、石がグラインドする音が広場に響き渡った。苔むしたコブラの守護神が顔を出し、逃げる泥棒を追いかけた。

「気をつけろ!」

レイノルドは片側に飛び込んで転がった。コブラの頭は、レイノルドの頭があったはずの場所で、鋭いく、カッと音を立てて顎を鳴らした。レイノルドは滑らかに転がり続けると、一瞬にして立ち上がった。

「ムワンギにはもうサーペントフォークはいないはず」

アリヤマが呆然としたまま、そう口にした。

「彼らは地表にはいない……ダークランドにいるのです。クラインの報告は完璧だったのに」

熱狂的な叫びをあげながら、トリはが一歩前に出て先頭のクリーチャーと対面した。バトルアックスと曲がりくねったダガーがぶつかりあった。

「俺達の学者先生はここだな」

レイノルドが息を切らしながら言った。

「入り口の壁に何か、警告みたいなものが貼り付けられていたんだが。この置物はその壁の棚にあったんだ。奴らに気づかれる前に1つだけ取ってきたぞ」

アリヤマは彼を睨んだ。

「何をニヤニヤしているのですか、泥棒でしょう」

「思いついたんだよ。これが終わったら、俺が正しくてアンタが間違ってたって、アンタが認めるんじゃないかって」

彼はウインクし、トリと戦っているサーペントフォークの方へと駆け寄っていった。首を振りながら、アリヤマはウェイファインダーを閉じ、両手を上げて原初の宝物庫の主たるアーバダーに祈りを捧げ始めた。

その額には一筋の汗がにじんでいた。


著者について
Jay Moldenhauer-SalazarはMagic:the Gatheringの公式ウェブサイトの著名なコラムニストで、彼はそこで5年間、毎週、記事を書いていた(様々な他のゲームのコラムと共に)。その間、彼はまた、Wizards of the Coast社のために幾つかのカミガワのwebストーリーを執筆していた。彼は生涯に渡ってのロールプレイング・ゲーマーであり、頻繁にGMをやっており、現在はカリフォルニア州オークランドでフィクション作家のグループの一員をしている。
この物語はPaizo社のPathfinderのための彼の最初の作品である。

Tales of Lost Omensについて

Tales of Lost Omensについて
Web媒体の短編創作小説のシリーズであるThe Tales of Lost Omensは、Pathfinderの失われし予兆の時代Age of Lost Omensについてのわくわくするような一幕を提供する。PiazoのPathfinder Talesの小説や短い創作小説を含む、ゲームの関連商品で最も高名な著者達の何人かによって書かれたこのTales of Lost Omensシリーズは、Pathfinderの設定にあるキャラクター、神格、歴史、場所、組織を、ゲームマスターとプレイヤー達を同じように触発するような魅力的なストーリーで紹介してくれる。


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