Tales of Lost Omens:攻撃陣形

「我々なら、出来る」

その言葉は、グローリアス・ペイオフ号の狭いながらも設備の整ったキャプテン・キャビンに響いき渡った。パスファインダー協会の派閥であるヴィジラント・シールのリーダー、エアンド・クラインが興奮気味に、そして確信を持って語った。

「南から上がってくるフェイの勢力を防ぐために展開している《封印》がいる。残りでポータルに近い勢力を圧倒できるはずだ。扉を開けられる。中に何があるにせよ、回収するか封印できる。そうして、最初の攻撃から奴らがまだ動揺している間に、整然と退却するのだ」

名高いパスファインダーがテーブルに手をついて自分の主張を強調すると、テーブルの端に積まれた巻物に目を通していた背の高いエクジャエ・エルフのフォラ・バルンが怪訝そうに眉を寄せ、咳払いをした。その静かな物音と素朴な仕草は、簡単に周囲の注目を集めた。

「それで。もし、あなたが言うようにスムーズにいかなかったら? 運命や魔法が期待通りになると信じて、我々を信頼してくれた人々の命を賭けるというわけ? 何人ものパスファインダーの命が失われる可能性のある計画には興味がないわね」

フォラは目の前の巻物に視線を戻したが、他のパスファインダーの戦略家たちは、彼女がまだ進行中の会話に、敏感に気を張っていることを感じ取っていた。

「そこで、あたしらの出番だ」

テーブルの端に座っている、引き締まった筋肉のハーフオークの女性がそう言って割って入った。彼女はカリスロ・ベナリィ。元海賊で、今は協会派閥の一つ、ホライズン・ハンターのリーダーである。

「うちのハンター何人かに、この東側の尾根の木が手薄になっているところを探させているよ。何か問題が起きそうな時にゃ、合図をすることになってる」

彼女はテーブルに身を乗り出しながら、その鋭い目で地図を見渡し、パスファインダーの各部隊の位置を示すマーカーや旗、そしてこの地域にはびこる無数のフェイの化け物達の位置を再確認しました。彼女は顔を上げ、彼女に残された最後の仲間に視線を向けた。

「ゴーム、何か追加することあるかい?」

「いいや、もう大丈夫だろう」

ゴームが地図を確認しながら首を傾げると、ドワーフの三つ編みの金具がジャラジャラと音をてた。

「グランド・アーカイブが擁する最高のバード、ウィザード、そしてクレリック達を配備チームに分散させている。もしもの時には、彼らが無事に脱出するために必要な魔法のサポートをしてくれるだろうし、彼らはこの地域の記録もすべて調べてくれている。うまくいけば、ハプニングは最小限に抑えることができるだろうし、もし何かが起こることを予見できなかったとしても、正しい判断をして適応するための最良のチャンスを手にすることが出来るはずだ」

エアンドは部屋を見渡し、パスファインダーの仲間たちと順番に目を合わせていった。

「それでは同意ということでいいか? 進軍の時間だな?」

一人、また一人。頭を振ってうなずいたていった。更なる議論はなかった。それぞれが、チームに配属された協会のエージェントの指揮をとるために出発した。

先に小屋から出てきたエアンドは、待機していたヒッポグリフの背中に飛び乗った。海岸まで移動してから、ヒッポグリフとその騎手は空中偵察を再開する予定だった。ゴームが短い言葉を呟き、指をリズミカルに動かした。するとその体はゆっくりと光の雲の中に消えていった。船長室を出たフォラは、船の欄干と垂直になるように向き直り、甲板が目の前で終わっていることを知らないかのように、その端に向かって歩いていた。穏やかな波が彼女の足元に押し寄せた瞬間。何気ない様子で彼女は欄干の外側へと足を踏み出した。波は甲板と同じように堅固に彼女の体重を支え、彼女を近くの海岸線へと連れて行った。

カリスロは自分の居場所が船の中にあることを知っていたし、他の者達のように船を見捨てるつもりはなかった。三角帽子をかぶって会議室を出た彼女は、静かにドアを閉めて鍵をかけ、甲板に上がって操舵手の横に立った。

「右舷に強襲!」

カリスロは叫んだ。その力強い声は海の波を切り裂き、乗組員のおしゃべりを黙らせた。

「カタパルトを用意! あたしらの一番得意なアレでおっぱじめるよ! そいつはなんだい?」

彼女の最後の問いかけに、甲板で慌ただしく動き回っていた船員たちは、叫んだ。

「ぶっとばす!」

そして、作業を再開した。船が岸に近付きながら舷側の武装を並べているのに、カリスロは小さな笛を唇に当てて吹いた。笛が耳に聞こえる音を発することはなかったが、カリスロは陸にいる仲間がその信号を受け取ることを知っていた。

すぐに彼女の予想は的中した。近くの海岸では、パスファインダーの一団が魔法の透明なベールの後ろから飛び出してきて、古くてぎざついたバオバブの木の塊のような何かに錬金術の火の瓶を投げつけていた。ほんの1秒後、木は恐ろしいほどの勢いで根を張り、攻撃してきたパスファインダー達に向かって突進していった。

「撃てェ!」

カリスロが声を張り上げるやいなや、砲手達が凄まじい弾幕を打ち込んだ。魔法で強化された金属の球体達は海風を通り抜けて弧を描き、そして、歌を歌う焼けただれた守護者達の、木で出来た体を破壊した。船長は、グロリアス・ペイオフ号の乗組員が協会の敵にもたらした破壊とその効率の良さを見ていた。彼女は更なる命令を出そうとして、ゆっくりとした微笑みが浮かべた。

「今のとこ、順調じゃあないか」

沿岸のジャングルの奥深くで、エアンドは一対のレッドキャップと必死に戦っていた。筋骨隆々としたノームを風刺画にしたような、ねじれた小さなフェイは、それぞれ3.5フィートの長さの刃を持つ大鎌を振り回していた。最初の一撃が左脇腹に来たとき、エアンドは素早く右手から左手に剣を投げて、その一撃を高く逸らした。

2人目のレッドキャップは、このパスファインダーが気を取られている間に足を切り落とすことを狙って、右から低めに振りかぶった。エアンドは最初のブロックの勢いを利用して、最初のレッドキャップの一撃の力に任せて、二人目の攻撃者の刃の上でねじり宙返りをした。体を地面とほぼ平行にし、右手に剣を戻すと、前に突き出す途中で柄を受け止めた。刃は2人目のレッドキャップの汚い髭を断ち切ると、一瞬にしてその首の後ろから出てきて、人殺しのフェイの嘲り笑いをスタッカートめいた呻きで沈黙させた。

宙返りを終えて三点倒立で着地したエアンドは、左手を地面につけてバランスをとり、右手を振りかざして2回目の攻撃を行った。残ったレッドキャップが大鎌を振り上げてそれを防いだが、エアンドはもう一度刃を持ち替えた。そして、左の手に刃を捉えながら、しゃがんだまま前へと突進した。

レッドキャップの目は、なおも、一瞬前まで刃があったはずの場所を見ていた。レッドキャップは驚きに目を丸くし、そして次に、頭を下にやってエアンドがすでに自らの胸から刃を引き抜いているのを見たのだった。

躊躇することもなく、疲れた様子もなく、刃についた血を払うと、エアンドは森の奥へと走り出した。彼は怒れるドライアドの注意を引くために声を張り上げた。それは、蔓に絡まって苦戦しているパスファインダーのグループのためだった。

エアンドが信じられないような剣術と機敏な動きを見せたその数ヤード先で、ゴームが透明な覆いの下で準備をしていた。彼は静かな驚きに笑みをこぼし、手を下ろして魔法のエネルギーを解除した。クラインが助けを必要としているときにレッドキャップに魔法のダーツを吹きつけるために用意をしていたのだ。ドワーフは戦いの音を追いかけ、ジャングルの奥へと進んでいった。

ゴームがフォラ・バルンを見つけるまで、そう時間はかからなかった。このシャーマンは両手を上げて、魔法でジャングルの植物(訳注:faunaとなるが文脈からするとfloraの誤り)を指揮していた。棘のある蔓の茂みが、驚くべき恐ろしさのピクシーの隊列をかき分け、古代のシダが広い葉を広げて、ナイアードが放った魔法の水をパスファインダーの部隊から遠ざけている。

ゴームはすぐにハープを取り出し、何年か前に自作した曲を演奏し始めた。「花弁の乙女達の眠り」Sと名付けた子守唄だった。戦闘の騒音を通り抜けて響くこの魔法の音を聞くなり、ピクシーやナイアード達は眠たそうにこくりと首を振り始め、まばたきをした。気を逸らす音楽はフェイ達を眠りに引きずり込むには不十分だったが、フォラが魔法で操っている蔓で手近なフェイ達を細かく切り分け、他の者達を森に追い立てるには充分だった。

「よくやったな!」

ゴームが叫びを上げ、透明化を解除してフォラのそばに歩み寄った。暫くすると、近くの木立の中からエアンドが現れ、悪戯っぽい笑みを浮かべ、袖についたおがくずのようなものを払った。他のパスファインダー達も合流し、やがて小さな遠征軍はほぼ完全に合流した。

「これからが大変だぞ」

とエアンドはジャングルの奥深くを見つめた。

「我々が来ることを知っている敵を目指して、この道なきジャングルの中をずっと行進してきた。目的地までの間のすべての谷や木の茂みにフェイの軍隊が隠れていた。そして、やっと我々は誰も開けたことのない魔法の扉を開けて、中にいるものに皆殺しにされないことを祈っているというわけだ」

「ああ、その通りだとも」

ゴームは答えた。

「パスファインダーであるということの、なんと愛しいことか!」


著者について
Michael SayreはかつてPathfinder Societyの開発者であった。そして、Paizoデザインチームの最新のメンバーである。彼は活躍中のフリーランサーでもあり、多くのPaizoの本やLost Spheres Publishing、Rogue Genius Games、そしてその他の出版社の出版物に、Pathfinder RPG及びその他のテープルトップ・ゲームのシステムをサポートする記事を寄稿している。Michaelの更なるショート・フィクションを、我々の Organized Play blogs やアイコニックのアルケミストである Fumbusの紹介で見ることが出来る。

Tales of Lost Omensについて
Web媒体の短編創作小説のシリーズであるThe Tales of Lost Omensは、Pathfinderの失われし予兆の時代Age of Lost Omensについてのわくわくするような一幕を提供する。PiazoのPathfinder Talesの小説や短い創作小説を含む、ゲームの関連商品で最も高名な著者達の何人かによって書かれたこのTales of Lost Omensシリーズは、Pathfinderの設定にあるキャラクター、神格、歴史、場所、組織を、ゲームマスターとプレイヤー達を同じように触発するような魅力的なストーリーで紹介してくれる。


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