Tales of Lost Omens:繋がり

ツーロンはその女から片目を話さないまま、報告書のページをめくった。彼女は病で青白く、そして絶えず咳払いをしていたが、その印象が覆ることはなかった。彼女は弱々しい微笑みを彼に向けた。にっこりとした、というよりは、しかめっ面に近かった。彼は報告書をめくる手を止めなかった。

「それで、あなたは、彼らが全員つながっていると……ミス……」
「ミセス・カヴィントとお呼び下さい。ロヴェリントは亡くなりましたが……神よ彼に祝福を、あの人は私の心と精神の中に生きていますし、私は忠実な女のままなのです」と言って、再びしかめっ面をして。
「ええ、わたくしはそれをお示しするために出来ることを全て行っておりまして―ー」
「あなたは、自分がアブロゲイル女王を重大な裏切りで訴えようとしているのだと理解していますか」

ツーロンが遮った。

「そして、そのような訴えは軽々しく行うべきでないことも。宜しいですか?」

「え、ええ、分かっておりますとも、サー。でもそうなんです! 女王は武器と物資を反逆者に秘密裏に提供しながら、キンターゴでの反逆を扇動するために愚かないとこ殿を遣わしたのdす。メナドール砦を破壊したのはあの方のお考えなのです! 反逆者達がそんなことをする手段を持っているとお思いになりますの? もちろん、そんなはずありません! それから、わたくしは聞きました。他のヘルナイトの一人が、それを自分の死を偽るために遣ったのだと。信じて下さいまし。わたくしはその繋がりを見つけましたし、わたくしが目にしましたのは……」

「ミセス・カヴィント。もう結構です。あなたを信じましょう。この証拠は十全ではありませんが、いっしょに取りかかれることは多い」

ツーロンは机から立ち上がり、扉の方へと歩みを進めた。

「我々の気がつくところにこの情報を持ち込んで下さったことに大きな感謝を。この件の追跡調査に力を注ぐことをお約束いたします。我が騎士の一人にあなたを送らせましょう」

ミセス・カヴィントは年齢からは全く不釣り合いな速度で尾口まで進み、それから執務室に入ってきた時と同じ、石畳の上を歩くような歩き方に戻った。ツーロンは自分がその不規則さに気付いたことを表に出さないようにした。

「ありがとうございます、護衛官。後悔はさせませんわ。シェリアックスは真実を知り、あなたは英雄になるでしょう。人々には知る必要があるのです」

彼女は彼の手を取った。

「ありがとう、ありがとう!」

「ええ、もちろんです、ミセス・カヴィント」

彼は女性の力強い、汗ばんだ掌から手を引き抜いた。

「良い一日を」

ツーロンは机に戻り、再度、報告書を開いた。絶対に何かがあるぞ、と内心で呟きながら手から女性の汗を振り払おうとした。手首を振っても何にもならなかった。そして、ハンカチーフに手を伸ばした時、彼はそれが汗などではなく、恐らく彼女の病気からくる、何らかの濃密な粘液であることに気がついた。最悪だ。

・・・・・・・

「ベルデのロード・ロヴェリントのおなりです!」

守衛が知らせを告げた。
老人が玉座の間に足を踏み入れた。アブロゲイルは彼が哀れな入場を続けるのを見て、すぐに待つことに飽きた。

「スリヴァン一代公爵が、そなたが重要な情報を持っていると申しておる」

彼女は接近し続けるロード・ロヴェリントに声高に告げた。

「そなたに宮廷への入場を許すことによって多大な名誉を与えていることは分かろう。さて、何を持ってきたのだ?」

ロード・ロヴェリントは帽子を脱ぎ、アブロゲイルに小さくお辞儀をした。

「我が女王陛下、その寛大さに感謝を申し上げます。我が家族とベルデの民は、貴女様こそが女王であり――」

「もうよい、ロード・ロヴェリント」

女王は言い放った。

「はい、我が女王陛下。臣は懲罰騎士団が貴女様に陰謀を企てていると考えております。奴らは、貴女様がシェリアックスに対する裏切りを犯したという主張で、貴女様を退位させようとしておるのだと思っております」

「ロード・ロヴェリントよ。もし、わらわが我が玉座に敵対すると噂される行いについての全ての噂について謁見を許可したとするなら、この部屋を出ること叶わぬであろうよ」

アブロゲイルは侮辱と共に答を返した。

「その主張について、どんな証をそなたは持ち合わせているのだ?」

「臣めは、貴女様を陥れる証拠として奴らが使おうとしていた素材の写しを手に入れております、我が女王陛下」

老人はローブの中から、多くの紙や巻物で出来た書類の束を取り出した。

「それを持ってここに来るがよい、ロード・ロヴェリント」

「もちろんでございます、我が女王陛下」

前に歩みを進め始めたちょうどそのとき、彼は玉座の間全体に響き渡る咳の発作をしはじめた。アブロゲイルは一瞬だけ嫌悪の表情を浮かべてそれを見つめると、ゴートクレックに書類を取りに行かせた。ピット・フィーンドの歩みは、巨石が地面に当たるような大きな音を立て、一歩ごとに炎が爆ぜるようだった。彼はロヴェリントの震える両手から書類を取り上げ、玉座の後ろにある自分の定位置へと戻った。ゴートkレッkは一瞬のうちにページをめくり、それから、書類を閉じる前に聞こえよがしの溜息をついた。

「ゴートクレックが教えてくれたところによれば、この証拠の内の幾つかは、薄っぺらいものだとか。実際のところは」

彼女は微笑んだ。

「この証拠の幾つかを使おうとすれば、騎士団自身が積極的に傷つき、罪に問われかねない立場に追い込まれることになるのだとか。よくやったな、ロード・ロヴェリント」

発作から立ち直り、ロヴェリントは緊張した声で答えた。

「ありがとうございます、我が女王陛下。臣めは、ただ、貴女様とシェリアックスのために最善を尽くすのみでございます。さて、報酬を頂ける可能性はありますでしょうか?」

「そうだな、無論だ」

アブロゲイルは守衛に手を振った。

「ロード・ロヴェリントの、シェリアックスとその女王への忠節が寛大な報酬を受けられるようにとりはからえ。以上とする」

ロヴェリントが玉座の間を守衛達に連れられて出て行くのを、アブロゲイルは遠くから見つめた。忌々しいツーロンめ。あやつは必ずや何か関わりがあるに違いない。玉座の間の扉が閉じるのを見ながら、彼女はひとりごちた。

・・・・・・・

廃墟となった家全体に、大きな笑い声が響き渡った。

「ええ、何もかも首尾良くいきましたわ、シェムール」

ミセス・カヴィントがロード・ロヴェリントの隣で地面に自らの身を投げ出した。

「『大いなる主』のご意思はなされました」

シェムールは満足した笑みを差し向けた。

「すばらしい。カヴィント、ロヴェリント、そなたらは主と数分間、話をするという褒美を与えられるでしょう」

シェムールはその手を広げた。彼女の裾から、幾つかの濃密なねばついた痰のような虫達が這い出てきた。虫達は前方へと這い進み、カヴィントとロヴェリントの耳へとのぼっていく。二人は苦痛と快楽が入り交じった恐ろしい泣き声を上げ、身もだえしながら折り重なって『偉大なる主』を呼ばわった。

「騎士団と女王はゲームを始めるでしょう。そしてすぐに、我々は誰が留まる意志の持ち主かを、知ることになる」

痰めいた虫がシェムールの指の間で身をよじった。

「『偉大なる主』がご覧になり、笑っておられる間、ずっとね」


アブロゲイル・スルーンと護衛官ツーロン・ヴィドックの間の衝突がどのように進んでいくのかを見るのに興味があるなら、発売中のLost Omens:Legendsをチェックしよう!

著者について
Luis Lozaはpaizoの開発者で、主に主にPathfinder Lost Omensの製造ラインで仕事をしている。彼はまた、Tyrant’s Grasp Adventure PathのBorne by the Sun’s GraceやAge of Ashes Adventure PathのBroken Promisesなどといった有名な作品を含む何十ものPathfinderとStarfinderの製品を書いている。彼のツイッターは@donatoclassicである。

Tales of Lost Omensについて
Web媒体の短編創作小説のシリーズであるThe Tales of Lost Omensは、Pathfinderの失われし予兆の時代Age of Lost Omensについてのわくわくするような一幕を提供する。PiazoのPathfinder Talesの小説や短い創作小説を含む、ゲームの関連商品で最も高名な著者達の何人かによって書かれたこのTales of Lost Omensシリーズは、Pathfinderの設定にあるキャラクター、神格、歴史、場所、組織を、ゲームマスターとプレイヤー達を同じように触発するような魅力的なストーリーで紹介してくれる。


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